用途
- 風を送る
- 扇子の主用途。暑いときに、手元で扇子を開いて自ら風を送ることで涼しさを得ることを目的に扇ぐ。繊細な構造であるため、強い風を送るのには向いていない。炭火をおこす場合に扇ぐ用途には向いていない、渋うちわか火吹き竹が妥当であろう、成田山等の寺社で護摩を焚く場合には、点火後、扇子を広げて火を扇ぐ所作が見られる。実質的な着火の用途でないのであれば扇子のほうが美しく見える。
- 落語の見立て
- 落語でのうどんなどを食べる場面で、畳んだ状態での扇子を箸に見立てて用いる。場面に応じて、刀や望遠鏡など様々な見立てがなされる。手拭と並んで重要な落語の小道具。噺家の隠語では扇子は風(かぜ)と呼ばれる(ちなみに手拭はマンダラ)。
- 挨拶の境
- 座って挨拶をするときに、胸元から畳んだ状態の扇子を自らの膝前に置き、それを境にするように相手に礼を行う。これは扇子に自他のさかいをつくる結界としての役割をもたせたものである。葬儀の際に喪主に挨拶する場合なども同様に行う。
- 胸に挿す
- 女性が和装の際に、懐剣の代用として帯に扇子を挿す。
- 弓矢の的
- かつては、日の丸の扇子(白地に赤い丸が描かれている)を開いて、弓の的にした事例がある。源平合戦で弓の達人と言われた那須与一が、平氏の船の上に掲げられた扇の的を射抜いた故事は有名。
- 棋士の思考の際の手すさび
- 将棋や囲碁の対局時、将棋の棋士や囲碁の棋士が考える際に手で開け閉めしていることがある。これは数十手先の着手を読む際に、開閉の単調なリズムが思考へ好影響をもたらすためである。なお扇子の開け閉めは相手にとって雑音として受け取られる場合もあることから、極力自分の考慮時間中に行う事が相手に対する礼節とされている。
- 舞踊の小道具
- 日本舞踊や能楽における小道具として、また仕舞・素踊などの際に本来の舞台において用いられる小道具の代りとして用いられる。(舞扇の項も参照)
- 口を隠す
- 礼儀として、笑うときに歯が見えないように口の前を覆う。
- 張り扇
- 講談師が講談の最中に、調子取りと音を出すために、釈台を叩く。
- 人を叩く
- 落語で自分の頭を叩いたり、踊りの師匠が弟子をたしなめるのに、手ではなく扇子を使って頭を叩く。空中で叩く所作をもって叩いたことにすることもある。(但し、武士階級では扇子で頭を叩かれる(叩く)行為は非常に屈辱を与える(あるいは受ける)物とされた。扇子で頭や手足を叩く行為は明治以降に行われる様になったと思われる。)
- ツッコミ用ハリセン
- 大きな紙を折り畳んで一方をテープで止めたものは、「ハリセン」と呼ばれ、ドツキ漫才などでツッコミ用に使われる。
- 投扇
- 投扇興(とうせんきょう)といい、扇子を的に向かって投げ、的を落とす遊びに用いる。技の名前に源氏物語の帖名や百人一首などが用いられる。
- 装飾
- 置物として飾るためだけの扇子。扇子を美しい工芸品として評価したもの。差し渡し1メートルに達する巨大なものもある。和歌を書いて贈る場合の白地の扇子も装飾あるいは次の贈答の意味だといえる。
- 贈答
- 能楽で節目の舞台をする時に、出演者や贔屓の方に配る(被き扇)。落語などでも行われる慣習である。かつては販売促進の物品に使われていたこともあったようだが、うちわにその座を追われた格好である。
- この他、平安時代などに於ける貴族階級で上位の階級の者が親しい階級の者に下賜するときの贈答品としても用いられた。
- 武器、護身用
- 骨に鉄を用いた「鉄扇」はほとんど鉄棒と変らないため、殴打用の武器となる。かつては刀剣などの武器を持込むことが禁じられた場所において、護身用の暗器として多く用いられた。扇子の紙の弧の部分に刃や針を仕込んだものの他、骨組みが稼動しない物に短刀クラスの刀身を仕込んだ物などが考案されている。
- フィクション作品では金属製短冊を重ねて作られた鉄扇もある。
- 密書
- 鉄扇と同じく、軍事的・武器的用途としての「仕込み」のひとつである。和紙を貼って作られるという点を利用して、裏側に文書を記録しておく。侍にとって印籠や扇子を持つことは一種のファッションであった為、取調べを逃れることが容易であった。
- 応援
- 応援団が和装で声援を送る時、手に「必勝」などの文字が描かれた扇子を振って調子を取る。鉢巻に挿す場合もある。
- 羽根扇子・ジュリ扇(ジュリせん)
- 日本で羽根扇子を用いた舞踊は宝塚歌劇に見る事ができる。主に歌劇中の女性貴族の持ち物として用いられ、劇中の華やかさを彩る物となっている。1990年代にはディスコで踊ることが流行し、ジュリアナ東京でも多く用いられたことからジュリ扇とも呼ばれた。またこの羽根扇子はストリップなどの舞台でも小道具として使われることがある。
- 盆の代用として(贈答時)
- 扇子に金封をのせてさしだすこともある。このとき要を手前にして、金封をのせ、相手の膝前に要がむくように、転回してさしだす。これは本来盆にのせてさしだすところを扇子で代用するという意味をもつ。
- 扇子腹
- 切腹の際、本来は実際に短刀で腹を切るのであるが、次第に形式化して切る形だけとなり、後には小刀が扇子で代用されるようになった。(介錯は行われたため、この場合斬首と大差ない。)
- 扇合わせ
- 平安時代の宮中において2組に分かれて、扇を持ち合い、その描かれた絵画や材質の優劣を競い合う行事である。円融天皇の天禄四年(973年)に行われた記録がある。
- 宮中行事の小道具
- 毎月一日、天皇が三種の神器が安置されている内侍所へ参拝する為に御月扇として月毎に扇が新調されたほか、毎年、絵所から賢聖御末広として、表面に古代中国の賢聖、裏面に金銀砂子に草花を描いた扇が献上された。
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